病気や治療

月経にかかわる体調不良

思春期から閉経期までの長い間,女性は月経(生理)と付き合っていかなければなりません。
月経や月経周期にかかわる体調の変化や不調は,全ての女性にとっての悩みです。
そして中には生活に支障をきたすほど不具合に耐えて過ごしている方もいます。

月経の不調に関する病気として,無月経,月経不順,過多月経,過長月経,月経困難症(月経痛),貧血,めまい,頭痛(片頭痛),腰痛,月経前症候群(PMS),更年期症候群(更年期障害)などが挙げられます。
これらの体調不良に対しては,月経を十分理解した産婦人科医が治療に当たるべきでしょう。

当院ではそれぞれの症状に対しより良い医療を提供いたします。

貧血(鉄欠乏性貧血)

当院では女性に多い貧血の治療に力を入れています。

医学的診断名としての貧血とは,血液中の赤血球の主成分であるヘモグロビンが少ない状態のことをいいます。
女性の貧血は徐々に進行し慢性化していることが多いのが特徴です。
そのためにふらつき感などの症状があらわれにくく,貧血であることに気づかず放置している方も少なくありません。
ヘモグロビンは血液中の赤い成分で体中に酸素を運ぶ重要な働きを担っています。
つまり貧血の状態では酸素が十分に行き渡らず,自覚がなくても体には負担をかけ続けていることになります。
具体的な症状としては,顔色不良,立ちくらみ,動作時の動悸,息切れ,爪の不調,氷食症(氷を好んで食べる)などの症状が挙げられます。

月経時の血液喪失によって引き起こされる女性の貧血のほとんどが鉄欠乏性貧血と呼ばれるタイプです。
鉄やビタミンを補充する貧血治療は一般の内科でも受けられますが,月経の状態も考慮した治療は産婦人科でしか受けられません。
また,だるい,疲れやすい,体調がすぐれない,憂鬱な気分,いらいら感などの症状が鉄欠乏と関連していることもあります。
検査で見つかりにくいため,このような状態を「かくれ貧血」とも呼びます。体内の貯蔵鉄であるフェリチンを調べることで判断します。

主な治療は鉄剤投与です。
そのほか,月経の状態や出血量をコントロールするためのホルモン治療,手術(マイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA),子宮全摘術など)、子宮内黄体ホルモン徐放システム(ミレーナ)なども必要に応じ検討します。患者さんの病状や要望に合った治療を提案しています。

過多月経・過長月経

過多月経とは月経時の出血量(経血)が過剰に多いことを言います。
しかし経血量はなかなか他人と比較しにくく,自己判断が困難です。

具体的には,生理用ナプキンを頻回に代えなくてはならない,経血にレバー上の塊が混じるなどで気付くかもしれません。
また過長月経とは,月経が8日間以上に及ぶことを言います。
過多月経・過長月経のいずれも,過剰な出血によって血液が薄くなり,つまり貧血を引き起こします(貧血の項を参照)。
原因疾患があきらかでい場合を機能性過多月経,原因疾患がある場合を器質的過多月経と言います。
器質的過多月経を引き起こす原因疾患として,子宮筋腫,子宮腺筋症,子宮内膜症,子宮内膜ポリープ,子宮内膜増殖症などが挙げられます。
治療としては,止血剤の服用,ピルなどのホルモン剤の服用,子宮内黄体ホルモン徐放システム(ミレーナ)の挿入,子宮内膜掻爬術,マイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA),子宮動脈塞栓術,子宮筋腫核出術,子宮全摘術などが挙げられます。

当院では,過多月経・過長月経を引き起こしている原因を正確に把握し,患者さんごとの状況や希望を考慮して治療法を選択していきます。 やみくもにがまんすることなく,是非相談していただきたいと思います。

月経困難症

月経痛(生理痛)が強く生活に支障をきたす状態のことを月経困難症といいます。

たとえば市販の鎮痛剤では効かないぐらいの月経痛は,産婦人科での診断と管理が必要です。
その背景に子宮内膜症を伴っていることもあります。

第一の治療としては,月経痛に対して消炎鎮痛剤・子宮収縮抑制剤などを使ってコントロールを試みます。
さらに状態に応じて月経痛治療用のピルや同等のホルモン剤を使うことで月経を安定させることができます。
その他として漢方療法もあります。
また月経に関連した頭痛(片頭痛)や吐き気を併発する方もいます。
その場合にはアセトアミノフェン,スマトリプタン(イミグラン)などの発作時治療薬,ロメリジン(ミグシス)やアミトリプチリン(トリプタノール)などの頭痛予防薬で治療することもあります。

若年者(中学生・高校生)でも月経困難症の患者さんはいます。
年齢に関係なく適切な対応により改善が望めます。

子宮筋腫

子宮筋腫とは子宮にできた硬い線維性のこぶ(線維腫)です。
小さなものも含めれば中年期女性の2割程度の方に子宮筋腫があるといわれています。
主な症状は過多月経(出血量が多くレバー状の血の塊も混じる状態)です。
その結果として貧血(血液中のヘモグロビンが薄くなった状態)になります。
そしてまた逆に,血液検査で貧血を指摘されたことをきっかけに子宮筋腫が見つかることも多いです。

サイズ,位置,個数だけではなく年齢などの状況も考慮して治療方針を決めていきます。

検査としては婦人科超音波検査,血液検査を行います。
手術も考慮しなければならない場合には造影MRI検査も行います。
まれですが子宮肉腫という悪性の病気も存在するので鑑別診断を要することもあります。

子宮筋腫の治療としては鉄剤投与による貧血治療,月経を軽減するためのホルモン治療,マイクロ波子宮内膜焼灼術,筋腫を取り除くための手術(筋腫核出術・子宮全摘術),カテーテルによる子宮動脈塞栓術などがあります。

子宮内膜症(子宮腺筋症・卵巣チョコレート嚢腫)

子宮内膜症とは,子宮の内膜細胞が本来あるべきではないところに住み着いてしまうことによっておこる病気です。
正常の子宮内膜細胞は子宮体部の内側にあり,月経のたびに出血し月経(生理)を起こします。
それに似た細胞が卵巣に住み着いてしまうと,そこで月に1回ずつ出血します。
しかしそこには出口がないため,徐々にたまっていき暗茶色のドロドロとした内容を包む嚢胞を形成します。
その見た目からチョコレート嚢胞とも呼ばれます。
また子宮の筋肉の中に子宮内膜細胞が入り込んでしまうと,月経のたびに炎症を起こして子宮の筋肉が腫れて硬くなってしまいます。この状態を子宮腺筋症といいます。

子宮内膜症の主な症状は痛みです。
月経痛,慢性下腹部痛,性交痛,排便痛などを引き起こします。
命に関わる病気ではありませんが,症状の重い患者さんにとっては非常に厄介な病気です。
しかしながら,近年では治療用のピルや黄体ホルモン剤が症状軽減に効果をあげています。
また軽症の患者さんにとっても,病状の進行を防ぐという意味で同様の治療が望ましいです。
がまんすることなく早めに相談していただきたいと思います。

月経前症候群(PMS)

月経周期に伴う身体的・精神的な不調に周期的にみまわれる状態を月経前症候群(PMS)と言います。

典型的には月経の7~10日週前から全身倦怠感,むくみ(浮腫),精神不安定(抑うつ・いらいら感),下腹部・乳房の張りなどの症状が起こります。
これらの症状は,女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が排卵後に上昇することに伴う体調の変動が過剰にあらわれたものといえます。
月経のある女性では誰でも多少なり感じる体調変化ではありますが,その程度が強ければ治療が必要です。

主な治療は,ピルなどのホルモン剤,漢方薬,安定剤(抗うつ剤)の3つです。
個別の症状や状況に応じて治療法を検討します。
また潜在的に貧血・鉄欠乏状態に陥っている患者さんも時折見られ,そのような場合には鉄・ビタミンの補充なども行います。

更年期症候群(更年期障害)

女性の更年期とは閉経のころおよびその前後5年間程度の期間を指します。
この時期の女性ホルモンの減少という変化に伴い引き起こされる多彩な身体的・精神的症状を更年期症候群と呼んでいます。
その中核となる症状は,血管運動神経障害とされるホットフラッシュ(ほてり)・発汗・冷えなどです。
その他の症状は不定愁訴とも表されるように,倦怠感・精神不安定・頭重感・頭痛・めまい・肩こりなどさまざまです。

診断は症状に関する問診が主ですが,更年期かどうかはっきりしない場合には血液検査でホルモン状態を評価することもあります。

治療はホルモン補充療法,漢方療法が中心です。
また精神安定剤を併用することもあります。

その他の補助療法として,栄養状態の評価に基づく鉄・ビタミンの補充,プラセンタエキス注射,エクオールサプリメントなどがあります。
ほてり・発汗に対してはホルモン補充療法が非常に有効です。
飲み薬・貼り薬・塗り薬(ゲル)があり,患者さんごとに相談して選択しています。

子宮脱・子宮下垂

子宮を中心に膀胱や直腸が腟の中で垂れ下がってきてしまうことを子宮脱・子宮下垂といいます。
主に分娩経験のある女性が閉経後かけて老年期にかけてなりやすい状態です。

治療は保存的治療(手術以外)と外科的治療(手術)とに分けられます。
程度が軽い場合、肛門と腟を数秒間締めてリラックスすることを繰り返す骨盤底筋体操と呼ばれるトレーニングが有効です。
骨盤底筋体操で効果不十分な場合や子宮脱の程度が比較的重い場合には,合成樹脂やシリコンでできた専用のリングペッサリーという器具を腟の中に装着し下がってくるのを防ぎます。これは日本で最も行われている治療法で,効果も出やすくすみやかに生活が楽になることが期待されます。

これらの保存的治療法で良くならない場合には手術も検討します。
手術には,腟式子宮全摘術および腟形成術,腟閉鎖術,メッシュによるつり上げ手術などがあります。

子宮下垂・子宮脱の症状は他の人に打ち明けにくく,ひとり悩んでいる方も少なくありません。
このような不調を感じたら早めに婦人科を受診することをお勧めします。

外陰腟炎

陰部のかゆみ・かぶれ・帯下(おりもの)の増量・帯下の異臭を来す状態のことです。
原因により大きくカンジダ(真菌)性の外陰腟炎と細菌性の外陰腟炎とに分けられ,治療も異なります。
自己判断での治療は症状を長引かせることもあるので,早めに受診し検査・治療を受けることをお勧めします。

性感染症(性病)

性感染症とは,主に性交(セックス)によってうつる感染症のことをいいます。
クラミジア,淋病(淋菌),トリコモナス,性器ヘルペス,尖圭コンジローマ,梅毒,B型肝炎,C型肝炎,HIV(エイズ)などが挙げられます。

症状は原因菌やウイルスによって異なりますが,陰部のかゆみ,湿疹,出血,帯下(おりもの),排尿痛,下腹部痛,できもの(いぼ)などがあります。 また症状が慢性化してしまうこともあります。
クラミジアや淋菌などは骨盤腹膜炎を起こすこともあり,結果として不妊症につながることもあります。

治療は内服薬,外用薬(塗り薬),腟洗浄,腟坐薬などです。
また,セックスパートナーと同時に治療を受けないとお互いの間で再感染を引き起こしてしまいますので注意してください。
性感染症の予防法はコンドームを使うことです。

子宮頸がん

子宮がんには子宮頸部に発生する子宮頸がんと,子宮体部に発生する子宮体がんの2種類があります。

子宮頸がんの発生ピークは30歳代で,若い世代でもかかりやすいがんです。
子宮頸がんは初期段階において無症状のことがほとんどです。
病状の進行に伴って不正性器出血,帯下の増加,下腹部痛,排尿障害などの症状が出てきます。
つまりそれらの症状が見られたときには病状が進んでいることもあります。
症状が出てからでは遅いので,定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
20歳から65歳までの女性においては1~2年おきの検診を勧めます。
65歳を超える方では,今まで定期的に検診を受け,かつ一度も異常がなければ,以降の検診を省略できるとされています(米国産婦人科学会,2016年)。
子宮頸がんはHPV感染が主な原因なので,世界的にはワクチンによる予防が効果を上げています。
ただし子宮頸がんワクチンを接種した方でも子宮頸がんが発生することもあるので検診は必要です。

子宮頸がん検診では,子宮頸部の表面を専用のブラシでなで採取した細胞を検査します(Papanicolaou test)。
検診時の痛みは軽度です。
検診後に少量の出血をみることがありますが,通常は短期間でおさまります。

子宮頸がん検診の結果,がんを含め細胞の異常が見つかることもありますが,実際のところそのほとんどはまだ「がん」ではありません。
「子宮頸部異形成」という前がん状態のことが多いので,強く心配する必要はありません。
またその多くが,時間をかけてゆっくりと治癒していきます。

しかし薬による治療法がなく,また悪化することもあるので十分に注意して観察しなければなりません。
まずは精密検査で子宮頸部異形成の程度を診断します。
精密検査には高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)DNA検査,コルポスコピー(腟鏡),バイオプシー(組織診)などがあります。
高度な子宮頸部異形成,またはそれ以上の病変が見つかった場合には手術を含めた治療が必要になります。

子宮体がん

子宮体がんは閉経前後の年齢で発症しやすい病気です。その多くが不正性器出血をきっかけに見つかっています。
また肥満,高血圧,糖尿病,月経不順,未産婦,乳がん既往などがある人にやや多くみられる病気です。
出血などの症状があれば検査した方がよいでしょう。
婦人科超音波検査,子宮内膜細胞診・子宮内膜バイオプシー(組織診)などで検査します。

子宮体がん検診において市町村の補助はありません。
症状がない方の場合,細胞診まで行うと痛みや出血を伴うので,当院では婦人科超音波検診を推奨します。
超音波で子宮内膜肥厚を認めた場合には細胞診なども併用します。
検査希望の方は申し出てください。

卵巣がん

卵巣がんの発症のピークは50歳代ですが,若いうちに発症するタイプもあります。
卵巣がんは転移を来しやすく比較的予後の悪い病気です。
さらに卵巣がんによる死亡は検診を行っても減らすことが難しいといわれています。
しかしながら,子宮内膜症がある方,乳がんの既往のある方,卵巣がんの家族歴のある方では卵巣がんの発生リスクが高いので,定期的なチェックを考慮します。
検査としては婦人科超音波検査が基本です。
卵巣に嚢胞や腫瘤を認めた場合には良性腫瘍と卵巣がんを鑑別するために,血液検査(腫瘍マーカー),造影MRI検査と検査を進めていきます。

不妊症

妊娠を希望する夫婦が半年から1年間程度以上たっても妊娠しない場合を不妊症といいます。

女性側の原因として排卵障害,卵管障害,子宮頸管の通過障害,着床障害などが挙げられます。
一方で,精子減少症・勃起不全・射精障害など男性側の原因もあります。さらに原因不明の場合も少なくありません。

まず基礎体温表を記録してもらい,通院の中で確認します。
基本的な検査として,血液検査(女性ホルモン・甲状腺ホルモンなど),超音波検査(卵胞や子宮内膜の計測),子宮卵管造影(ヒステログラフィー),子宮鏡検査(ヒステロスコピー),クラミジア検査,精液検査などがあります。
当院では,まずタイミング指導を行います。さらに必要に応じて治療を行います。
排卵誘発(クロミフェン内服,hCG・hMG注射など),人工授精までは対応可能です。
体外受精が必要な場合には専門のクリニックへ紹介いたします。

加齢とともに卵子の質は落ちていきます。35歳以上では妊娠しにくくなり,また流産や染色体異常の頻度も高まります。
30歳を過ぎた方で妊娠を望むのになかなか妊娠しないと思う場合には早めの受診をお勧めします。

習慣流産(不育症)

妊娠が判明しても,残念ながらそのうちの1~2割程度は流産に至ります。
多くの流産は偶発的な染色体異常が原因であり,つまり予防や治療はできません。
一般的に流産を繰り返す確率は高くないのですが,流産を繰り返してしまう方もいます。
3回以上連続で流産に至った場合,習慣流産(不育症)と判断します。
原因不明のことが多いですが,ときに甲状腺機能異常,抗リン脂質抗体症候群,子宮奇形などが原因として考えられる場合もあります。

当院では一般的な習慣流産に関する検査・診断を行います。
治療については状況に応じて判断しています。